研究内容

1.超水滴法に基づく高精度気象モデルの研究開発
現在の天気予報や気候変動の予測には大きな不確実性が伴いますが, シミュレーションモデル自体の信頼性が低いことがその1つの要因になっています. 私達は「超水滴法 (Super-Droplet Method)」という独自の方法により, 世界最先端の精密気象シミュレーションモデルの開発を行っています. このモデルを例えば集中豪雨のメカニズムの解明に役立てたいと考えています. また, この技術を火山噴煙やエンジン, 惑星形成などのシミュレーションにも応用しようと考えています.

洋上の積雲から雨が降る様子. 画像をクリックすることで動画を見ることができます.


雄大積雲のVR動画 (共同研究者である松嶋俊樹博士(R-CCS)が作成)


2.同期現象
リズムを刻む素子が相互作用することで自発的に同期し, 集団としてマクロなリズムを生み出す現象を同期現象・リズム現象と呼びます. 例えば, メトロノームといった機械的なものから, 心臓の細胞, 体内時計 (概日リズム), 拍手, 蛍の発光, カエルの鳴き声といった生物的なものまで, 様々なものが同期することが知られています.

擬似ホタルの集団発光シミュレーション


3.連結階層シミュレーション
物理法則には階層性があり,  ミクロな領域とマクロな領域が現象の中に共存することがあります.  この特徴を利用し, 注目する現象のマクロの振舞いを効率良く, かつ, 精密に数値計算しようというのが, 連結階層シミュレーションと言う方法論の発想です.

2 つの位相特異点の引力的相互作用の連結階層シミュレーション. (a) は原理計算の結果. (b) と(c) は連結階層シミュレーションの結果で, (b) に表示された領域のうち, (c) の赤い領域に対応する領域がミクロ領域です.


4.社会・産業・環境のシミュレーションにおけるデータ同化の開拓的研究
データ同化とは, 不確かさを伴うシミュレーションと観測を融合し, そこからより確かな情報を抽出する統計学的枠組みです. 社会・産業・環境に関する複雑な現象のシミュレーションにデータ同化を応用する研究を行っています.

粒子フィルタによるRosslerモデルの状態推定


指導学生の研究テーマ

・超水滴法を用いた東京上空の乱層雲の再現シミュレーション
・降水粒子の後流における雲凝結核活性化過程
・液滴の自然分裂過程に関するアルゴリズム開発
・熱帯域の海洋性雄大積雲における雨滴粒径分布の超水滴法による再現
・超水滴法による北陸山岳性降雪雲の二次元理想シミュレーション
・オイルミストセパレータにおける微小液滴の壁面付着量及び流動特性に関する数値解析
・氷粒子の結晶成長モデルの改良と積乱雲の数値計算に及ぼす影響の評価
・エアロゾル再放出過程が山岳性の雲・降水に及ぼす影響の超水滴法による数値的評価
・金星の雲の共凝結成長ダイナミクスにおける分岐構造の解析
・氷水混相の雲微物理過程に関する多孔性回転楕円体モデルの性能検証と改良
・超水滴法による海洋層積雲のシミュレーションと大気境界層の乱流構造
・東シナ海における総窒素酸化物の輸送と化学的変質に関するモデル解析
・粒子の衝突併合を考慮した噴霧塗装シミュレーション
・超水滴法による海洋層積雲のシミュレーションとエアロゾル影響の評価
・スコールラインのシミュレーションに必要な空間解像度の評価
・再帰的アルゴリズムによる超水滴法の改良
・遺伝的アルゴリズムによる動物将棋の教師なし学習
・神戸市内における花粉の飛散シミュレーション
・対話型進化計算による人の好みの自動抽出
・波力発電シミュレーション
・淡路島における新しい分散電力供給システムの提案
・人の流動に着目した神戸元町商店街の活性化